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2010年10月15日 (金)

《読書感想》 第三の買収 牛島信

企業買収や防衛の勉強のために読むのであれば、本職弁護士の手になる作品なので、これ以上は無いというテキストだと断言できるかと思います。もちろん執筆後に制度が変わっている部分については補う必要がありますが、法務担当者必携の書と言ってもいいでしょう。

ただ、純粋に「小説」として見ると、人物描写が繊細さに欠け、性格等の設定にやや難があるため感情移入がしにくい面があるのではないかと思います。根本原因は、キャラクターを書きたいストーリーに沿って雑に動かしていること、即ち人物本位ではなくイベント本位で執筆しているためでしょう 。

常勤監査役の最終決断に至る心情や、ラストのEBOに対する社内の反応など、読んでいてどうしても違和感の拭えない部分が少なからずありました。弁護士として書いてみたい事件がまずありきで、登場人物を活き活き描写することを疎かにしているのではないかと言ったら言い過ぎでしょうか?

ただし、こうした”難癖”は本書の価値を著しく貶めるものではありません。この本で何より驚かされるのが、作者がMBOの問題に関して現実世界で起こりうり事態を小説の形式で見事に予見した点です。敏腕弁護士たる筆者の本領がこの「第三の買収」で見事に発揮されているわけです。

表現者としてはある種のぎこちなさが残るため、一般読者には取っ付きにくい面もありますが、会社が買われるとはどういうことかを知る上でも一助になる本書は、ビジネスマンなら手にとって損のない一冊でしょう。小説で描かれているような事件が、明日はあなたの身にふりかかって来るかも知れないのだから。

【雪風ファンドの読書感想(1)】

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